日本のブランド・マーケティングの肝を掴む
日本市場におけるブランド・マーケティングの発展は、プロダクト・マーケティングのそれと比較して遅れてはいるが、高品質な日本製の電子機器や日本の製品デザインにおける高い標準を考えれば、特に驚くことではありません。ただ、ブランド・マーケティングも重要なのです。 WPP マイク・バズビー
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日本では職人技が非常に重要視されます。何千年もの間培ってきた製造の伝統と卓越したエンジニアリングがあり、それで日本は世界の注目を集めてきたからです。
同時に、日本ではすでに確立されたマーケティング手法が存在することも事実で、その方法は大きく製品に依存しています。日本のメディアに掲載される広告には製品に焦点を当てたメッセージが目立ちます。企業は製品を販売しているのだから当然ではあるものの、日本以外の国、例えばアメリカやイギリスの広告を見ると、消費者の感情に訴えるブランド・マーケティングを数多く目にするのです。
だからといって、日本の広告にユーモアやエンターテイメントによる感覚的なストーリーテリングがないといっているわけではありません。ただ非常に機能的であると思うのです。
ブランド力にこそ価値があるというデータもあります
WPPのブランド分析プラットフォームであるBAVが30年にわたり消費者を調査して収集したデータから、ブランド力と企業の業績には直接的な相関関係があることが分かっています。ブランド力は製品によるところもありますが、その他の要因、つまりBAVが「ブランド属性」と呼ぶものによっても左右されます。
価格設定や流通による製品マーケティングでは、投資に対する直接的なリターンを目に見える形で直ぐに確認することができます。しかし、ブランド構築は即効性があるわけではなく、結果が出るまでに数年とは言わないまでも数ヶ月かかることもある。BAVのデータからわかることは、世界全体でも日本という一市場においても、ブランド価値は株式市場の株価やブランド推薦のデータに現れるが、それには時間がかかるということです。BAVでは、最も強いブランドはS&P500企業の平均的なブランド力よりも78%速く事業価値を成長させるという分析が出ています。また、BAVのブランド力が3%上昇すると、そのブランドの市場シェアが1%上昇することも分かっています。
BAV は、ブランドの構築と将来に向けたブランド強化にも役立ちます。ひいては製品の成長も促します。プロダクト・マーケティングとブランド・マーケティングの両方を行うことで、つまり製品の強みと感覚的なつながりを合わせることで、最終的にブランドはより賢明なマーケティング ミックスを実現できるようになります。
BAVの過去と現在のデータを利用して、ブランドの発展の道筋を追跡することができ、そしてもっと重要なことは、それを予測することができます。BAVデータは、直接の競争相手との関係におけるブランドのポジションを示すだけでなく、市場全体との関係も示すことができます。
例えば、スマートフォンを販売している企業は、他の携帯電話メーカーとだけ競争しているわけではありません。最新ゲームや電動自転車、限定ウォッチなど可処分所得が類似している商品と競合する可能性もある。そこが複雑なところで、企業が可処分所得を勝ち取るには、直接の競合相手だけでなく、すべての競合に目を向けなければなりません。
そして国もブランド
製品が製造された国が、その製品のブランド価値にプラスの影響を与える逸話はよく知られています。「BAV ベストカントリー」のデータから、ブランドがどこから来たかが重要であることは分かっています。実際データを見ると、消費者の83%が、国の文化を定義する上でその国の消費財が重要な役割を果たしているという言及に同意しています。
例えば、日本車やドイツ製電子機器にはすでにある程度高い評判がありますが、ドイツ車と日本製電子機器にはもっと強力で好意的な評判が存在します。それぞれの車や電子機器製品のパワーは当然あるものの、製品ブランド以上にその国の力がブランド資産を倍増させることもあるのです。
BAVの消費者データから、WPPは特にこの点に注目しています。全世界の消費者が、また少なくともアジア各国の消費者は、デザインやファッション、テクノロジーにおいて日本の動向を注視しています。この分野で日本が特に革新的だからです。しかし何故か、日本のブランドは日本の外に一歩出ると自分たちのことを語らない。「BAV ベストカントリー」のデータは、日本のブランドが海外市場で成功するために必要な背景情報を提供することができます。
例えば、日本の自動車ブランドはBAVを使って、オーストラリアの消費者よるブランド認識を、アメリカやイギリスと比較しながら、考察することができます。外を見渡せるようになることで、企業はそのブランドに対する世界における認知を理解し、自国の市場から世界の表舞台まで、どのようにビジネスを推進していくかについて意思決定できるのです。
もっと大きな視点で
マクロ経済の観点から見ると、パンデミック後の日本経済は緩やかに景気を回復しつつあります。このような環境下でブランドがその可能性を最大限に発揮するためには、ブランド構築、つまりブランド・ラブ、ブランド影響力、ブランド・アドボカシーを高めることに重点を置くことが近道となります。
経済においてもマーケティングという分野においても、日本はアメリカと密接に結びついています。したがって、企業が自社のブランド力をどこで手に入れることができるのか、そしてどのくらいのスピードで強くすることができるかを考えると、日 本とアメリカとの間にはまだ距離があり、特にデジタル化においてはそれが顕著です。
競ってブランドを売り込みブランドを作り上げようとするマーケターにとって、デジタル化によるマーケティング・タッチポイントの細分化は難しい課題です。この10年間、日本では実質的なデジタル変革が進んではいたものの、デジタル・プラットフォームやストリーミング・サービスなど、新しいメディアの導入は比較的に緩やかでした。これは、日本人口の高齢化が進み、伝統的なメディアへの傾倒が顕著だからでもあります。
実際、今の日本人口の28%が65歳以上であり、その数は2070年までに約38%まで増加すると予測されています。彼らは日本の人口割合を増やしているセグメントであり、同時に大きなマーケティングのチャンスであり、無視することはできません。つまりブランド・ラブは若い層だけのものではないのです。高齢者層も、ブランドを単に商品を売り買いするだけの関係として見ているのではなく、ブランドからの影響やインスピレーションを求めているのです。これはすべての年代層に当てはまります。
消費者が信頼できる魅力的な関係を築くことに努力するブランドは、より強くなり、彼らのビジネスは成長するでしょう。製品マーケティングにとどまらないこのアプローチは日本ではまだ遅れていますが、現在の日本市場で明らかに求められているものでもあるのです。
強いブランドとは、いったいどのようなものでしょうか?結局のところ、それはブランドの影響力、ロイヤルティ、アドボカシーなのです。ブランドはあなたに何か行動を起こさせる力を持っていますか?あなたは同じブランドの商品をもう一度購入しますか?自分が買うかどうかは別として、あなたはそのブランドを友人に勧められますか?この質問にイエスと応えてもらえるブランドこそが株主が企業に求めているものであり、それがブランドの強さなのです。
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