グッと短縮した日本のカスタマージャーニーと、ブランドへの影響
デジタルやソーシャルがマーケティング界を席巻するなかで、日本の消費者の商品認知から購入までのジャーニーはかつてないほど短縮されています。WPPジャパンのマーケティング&グロース担当マネージングディレクターである髙市康太が、この新しい消費者実態にブランドがどう対応すべきかを解説します。
日本の消費者のカスタマージャーニーはかつてないほど短縮されています。様々なモバイル決済システムの普及や、世界と比べても唯一無二であるコンビニや自動販売機ネットワーク網の密度の高さ、そして効率性を重視する文化も相成って、日本では認知から購入までの経路が非常に短く、消費財購入に至っては時にわずか数秒ということもあります。これはブランドにとって課題であると同時に、チャンスでもあるのです。この短縮されたジャーニーの含みを理解することが、日本市場での成功には不可欠です。 東京の街を歩くと、コンビニや、今やラーメンにマカロン、そして世界中の航空機内食までを販売する無数無類の自動販売機を目にします。消費者にとって購入機会は至る所に存在し、加えてモバイル決済の普及も相まって、購入へのスムーズな流れが確立されています。消費者はいつでも購入ニーズを満たすことができるため、ブランドは機会を逃さず、購買決定に効果的に介入して影響を与えるアジリティ(機敏な対応)と嗅覚が求められます。
マイクロモーメントを掴む
この短縮されたジャーニーは、マイクロモーメント、つまり消費者が彼らのニーズに基づいて行動し、瞬間的にデバイスを使って購入するモーメントの重要性を示しています。
近くのコーヒーショップを探す、商品のレビューを比較する、セール期間終了間近になって購入するなど、全てのマイクロモーメントにおけるブランドのビジビリティ(情報への可視性とアクセスのし易さ)が成否を分けるのです。同時にモバイルデバイスで決済を済ませる消費者も増え、モバイル最適化とシームレスなモバイル体験の重要性が高まっています。ブランドは、これらの局面で存在感を示し、消費者を惹きつける準備を整えておく必要があります。
ブランドにとって、アジリティと最適化が最優先事項であるものの、短縮されたジャーニーの中において強いブランドエクイティを構築することの大切さも見逃すべきではありません。トレンド変化の速い日本市場において、ブランドは消費者と情緒的なつながりを追求する必要があります。使われている最先端のテクノロジーに関係なく、人々に響くアイディアを生み出すことに重点を置き、「そのテクノロジーが無かったとしてもそのアイディアは本質的に強いのか?」と常に自問し、説得力のあるストーリーを作り、どんなタッチポイントであっても強く効果的なクリエイティブを世に出すことが肝要なのです。
ソーシャルから購入までシームレスなコンバージョンを
他の市場と同様に、ソーシャルメディアは日本のカスタマージャーニーの強力な推進力となっています。X(旧Twitter)は日本社会の性質と相性が良いためか、世界と比較して影響力の強いプラットフォームとなっています。InstagramやTikTokはZ世代以外のターゲット層にも拡大しており、Instagramでは「インスタ・グランマ」たちがレトロファッションのセンスをシェアしたり、ビジネスエリート層がTikTokで投資のヒントを投稿したりしています。どちらも多くの場合、商品やサービスに直接リンクしています。
この短縮化されたジャーニーにおける重要なポイントを整理します。
- プラットフォーム毎に最適化する: ソーシャルメディアは万能ではありません。消費者は異なる目的を持ってあらゆるソーシャルメディアを利用するため、ブランドは各プラットフォームに合わせてコンテンツを精緻に調整する必要があります。
- マイクロモーメントを掌握する: 消費者が購買の意思を固める瞬間を逃さず、機敏に対応できる戦術に重点的に取り組み、消費者にアピールする準備を整えます。
- データやテクノロジー時代だからこそエモーショナルな訴求を: 短いジャーニーであっても、消費者の心を揺さぶる説得力のあるストーリーテリングこそが、サステナブルな本物のつながりを構築します。
- ソーシャルコマースを取り入れる: ソーシャルプラットフォームを活用して直接販売を促進し、購入までの経路を意図的に短縮します。
日本の短縮化するカスタマージャーニーのダイナミクスを理解し、上述の戦略を効果的に採用することができれば、ブランドは効果的に消費者の注目を集め、サステナブルな関係を築き、ユニークでダイナミックな日本市場で成功を収めることができるでしょう。
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